酸化と還元のぎもん。
金属の色は、酸化すると古びた色になって、還元されると新しいような色になる気がしまして、酸素イオンと金属イオンが結合している釉薬の脱酸素をすると還元された釉薬の色になるのかな?焼き物の釉薬の中から酸素が奪われるから、酸化物だった釉薬が還元されて、精製された時の金属のような新しい金属のような色になるのかな?化学の世界では遷移金属元素と言ってグループ分けして、理解しやすく、覚え易くまとめているというだけ、遷移元素とわざわざ言わなくとも金属という姿が実生活や焼き物の中にある、それだけです。そして身のまわりには、金属がイオン化する、金属たちはつねにイオン化したがっているのがひしひしと伝わってきます。水によってイオン化し、助けたり妨げたりしているのが酸素だったり一酸化炭素だったり窯から出てきた焼き物たちは、変わり果てた姿になったり生まれ変わった新しい姿だったり。溶中金属イオンと釉薬の色と酸化後の色をもっと理解できたら。。。
陶芸のうわぐすりは粘土の色と、釉薬に含まれる金属イオンの焼成後の変化が金属の鉱物の酸化であり、金属が鉱物だった時の色、金属イオンとしてうわぐすりに溶けている時の色、そして酸化物となって窯から出てきたときの色がまるで姿を変えているのがとても不思議です。
焼き物の釉薬は鉱物を含むことで、焼成後に酸化または還元され発色を伴って陶器に彩りを与えます。鉄分の酸化の錆びの色に近い色が現れたかと思うと、還元焼成によって新しい鉄の色が出現したり、化学変化を目の当たりにすることになります。レアメタルであるチタン釉も酸化と還元では変化します。
ベンガラと呼ばれる赤系の顔料は酸化鉄の成分。インドのベンガルの地名からつけられたと言われています。赤土も鉄が多く含まれます。赤土にちなんだ地名も多く、赤坂や赤堤は赤土の多い土地だったとことからつけられています。植木鉢の赤茶色も鉄分、そしてヒトの血液が赤いのも鉄分です。鉄が酸素と結び付いた状態で安定していることで、安全であり、ファンデーションの色の調整、アイライナーやマスカラの色の調整にも使われています。
鉛が有毒なことがわかって、ガラスに入っていた鉛は今は使われなくなりました。一方で、釣りのおもりに使われる鉛はそのままで代替が進みません。タングステンという思い金属があるけれど、とても高価で魚のために、海のためにとはいかないのが現実です。陶芸の発色を良くするための鉛も有毒とわかってから九谷焼は苦労したと読んだことがありますが、鉛フリーに取り組むことで、さらにブランド力をアップさせたともいえます。美しい七宝焼きの発色も鉛、ほうろうも鉛。ヨーロッパにはそうした規制のRoHSローズ指令があります。常滑や多治見、九谷の研究所などでは鉛の代りになる発色の釉薬を研究、試験されています。ただし陶芸家の認知はされておらず、Pb-richなガラス質の高屈折率なガラスが虹色現象を発現させる釉薬があります。 マンガンラスター
鉛だけでなくビスマスもこの先規制の対象になるでしょう。ゆくゆくはパラジウムもコバルトもカドミウムも有害ですから。すでにドイツでは禁止されていることを日本の歯科技工士さんたちは知っておられますが、日本の健康保険で認可されたむかしのままの体制で歯科にパラジウムのまざった銀歯がつかわれているように、陶芸も周知徹底がかなり遅れた分野といえます。
え!?食器に鉛が入ってたの?知らなきゃ損する
鉛とお皿の記事日本製サラに鉛毒 昭和33年 サンフランシスコで鉛を検出した日本のお皿
無鉛の釉薬
油絵の絵具の名前にカドミウムレッドとかコバルトブルーがあります。チタニウムホワイト以外どれも危ないサウンドです。「釉薬と鉛の毒について」の言及を読んで、髪を染めるヘナのことを思い出しました。ヘアダイも化学物質を使わず植物由来がいいという宣伝があり、それが流行ってのっかる友人がヘナを使って染めていました。でも30年前モロッコに旅してヘナの粉を買って帰って来たことがある私はヘナで染まらないことを知っています。ヘナは植物の乾燥の粉で、手にいっちんを使って模様を施す文化がモロッコにありました。実際にモロッコ人に描いてもらった体験がありますが天然なので3日くらいで落ちてしまうのですが、粉は抹茶色、手に描くと茶色でした。日本で流行ったヘナはいつ頃だったでしょうか、日本で美容師さんにヘナで染める話題を聞いてみると、ヘナだけでは染まらないしすぐに落ちてしまうので、普通のヘアダイに入っていない別の物質で補って染めるので、自然志向の謳い文句でも矛盾することを聞きました。釉薬も同じことが起きていて、九谷焼きの鉛を別の金属で補って発色させている、いや、鉛不使用を補うための別の鉱物がさらに有毒なのであえて有鉛を宣言しているという話がこのリンク先釉薬の業者さんのサイトに書かれています。コバルトブルーはとても美しいのですが、コバルトを素手で掘らされている子供の児童労働のアフリカの話をタンタルを調べた時に読みました。陶芸の発色に興味がわいて追及するほど、金属と有害な金属にいきついてしまいます。中国の鉛の食器の話も。それでまた思い出してしまいました。デザインフェスタで若いクリエイターが恐ろしい鉛でピアスを手作りして販売していたことを。
地球誕生、酸素の誕生の痕跡を見るうえで温泉という生きた標本があげられます。 シルバーアクセサリーの銀は硫化水素に反応して硫化し黒く変色します。これも、表層の膜になっています。磨いたり、表面の膜を剥がせばもとの白い銀色に戻ります。 この硫化水素を利用して酸化する生物が一番熱い温泉の湧き出し近くにいて、次に光合成はしても酸素を発生しないオレンジ色の生物、そして温泉の出口から離れたところに青の生物となっているのだそうです。地球上の生物の進化の縮図というのは温泉をとりまく生態系と一致しています。 地球史の解読の調査研究の試料採取にも、分光器が使われていて、生物の持つ波長により色で識別されます。 シアノバクテリアによる青やシルバーを硫化させる硫黄、変色した黒などのさまざまな色の不思議を連想させます。 チタニウムといえば、温泉にも反応せず変色しない素材。結婚指輪の材質に最適なのがチタン。 バクテリアといえば、金魚を水槽で飼っていて、少し生臭いと思ったらバクテリアをすこし入れてやるだけで水はたちまちきれいになり、生臭みも一気に消えました。 水質もこだわって水の生き物を飼うと愛着が増すように、土壌にこだわって草花を栽培するのも奥が深い趣味。 例えば人気のブルーべりーを家庭菜園で育てようとすると、まずは土壌管理から始まり、酸性の土を好むブルーべりーのために、PHを勉強し、鹿沼土とピートモスの混合土を用意したりという手順。そういった下ごしらえから良いものが育ち、実るということを実感したりできます。
チタンの酸化皮膜による青色は青の原色「シアン」と呼ぶことができます。
シアノバクテリアのシアノは青のシアンという意味で、光合成の色素を持っています。
*シアノバクテリアとは
19億年前、地球上で初めて光合成をするワザを身にまとった微生物の名前
オーストラリアの海岸にある岩のようなカリフラワーのようなストロマトライトに似た構造体が見つかりました。
この海岸の岩の表面でシアノバクテリアが光合成を行っていて、盛んに酸素を発生させています。
*ストロマトライトとは、シアノバクテリアが作り出す構造体のこと。
石の表面にシアノバクテリアが少しだけついて大きくなっていく、ぼこぼこした構造体。
*軟体動物の血液が青いのは銅イオンが含まれているから。
結婚指輪の制作と研究
現代のチタンの青い酸化皮膜にも似た構造があります。
光触媒です。光触媒は環境に関する用途として研究が進んでいますが、ジュエリーのチタンリングの青い色にもなんだか地球上の酸素誕生の縮図が、チタンの表層に現れているように思えてきます。
ステンレスの素となる鉄の鉄鉱石というのは、地中にあると思っていましたが、実は地球の歴史と元素分布を調べていくと、海中の鉄からできていたことがわかりました。
鉄分というのはもともと海中にあって、その鉄分が海水中の酸素と結びついて酸化し、酸化鉄となり沈殿しました。海底に沈殿物となった酸化鉄が堆積岩となり鉄鉱石となったわけです。鉄の最大の落ち度は錆びですが、もともと酸化鉄という酸化化合物の姿で地中にあるのが鉄で、反対に化合物にならないのが金(Au)です。ゴールドは酸化化合物を作らずに金のままの形で自然界に存在してたから人類が地中から見つけ易く、古代から利用されてきた長い歴史があります。
鉄の最大の落ち度はさびでと言っても赤錆びは劣化のさび。それに対し鉄の黒さびは向上のさび。黒錆は赤錆と比較して10倍緻密な針状の固いさび。
資料* チタンはなぜ身体の中で錆びないのか?チタンは錆びる?
■クロム
サージカルステンレス製のジュエリーというのも歴史がほとんどない新しいアクセサリーです。そのサージカルステンレスの素となるクロムは、地中にはあまり無く、発掘調査によって発見された特殊な濃集層によると、クロムや地球にあまりないイリジウムが見つかっています。このことから、巨大な隕石が降ったと考えられるようになり、地球の歴史がひっくりかえりました。
電気分解とは、自然の環境因子による反応ではなくて、電気のエネルギーを与えてむりやり電子を移動させ反応を起すものです。電気分解
水素で思い出すのは原子力建屋の水素爆発です。炉心のハフニウムも溶融しました。原子力建屋3号と4号が水素爆発しました。燃料被覆管のジルコニウムが高温に達したとき、手近にある酸素を奪い残った水素が爆発しました。
皮膚とハフニウムとジルコニウム
*ジルコニウムと水素爆発水素爆弾の水爆。
水素はどこから来たのですか?
水素を使ってエネルギーとして水素自動車を日本で主流にしようと推進されている、その水素。これから東京にはガソリンスタンドの変わりに水素ステーションが造られる計画だそうです。EV電気自動車は充電に時間が掛かります。
以前、電気系統の故障でその時に乗っていた電車が動かなくなり、しかたなく電車を降りて徒歩で帰宅した思い出があります。多くの乗客が下車したため、駅前のタクシー乗り場はたちどころに長蛇の列ができていたので、私は諦めて歩いて帰ることにしました。その途中、下車した多くの方たちが乗ったタクシーの縦列を横目に見ながら徒歩でクルマを追い抜き追い抜き、また追い抜いて帰路についたのでした。
そんな体験があるので、実際にEV車が普及し、もしも乗っていたEV車の充電が切れた時、電気自動車の充電を待つとしたら、そのあいだに徒歩で帰れてしまうなと思えます。長距離トラックも充電が待ちきれないでしょうから普及するなら、「水素自動車」の方でしょうか。
水素か電気かガソリンか、技術の競争があって、最終的にどうなるか興味深い記事がありました。
地球環境への対応を基準とした究極の高性能とは、走行時のエネルギー効率がもっとも高い車だということが明らか…*資料→抜粋ここから「日経新聞あたりは、EVの方が自動車として高級だと言った記事を書くが、駆動技術という観点から見れば、原理は、遊園地のミニカーなので、なにも高級な部分はなくて」抜粋ここまで
宣伝に惑わされず本当に良いものが淘汰された中で残ってみんなが気付くにはまだ20年かかるそうです。
仏、英、中国などは将来的にガソリン車から電気自動車にシフトさせる方針を示しました。充電といえばバッテリー。私たちの日常に欠かせないスマホにもEVにも使われるバッテリー用リチウムイオン電池の材料はコバルトです。
タンタル同様に、コバルトもコンゴ民主共和国(もとザイール)が世界最大の産出国。日本の自動車メーカーは、紛争鉱物の使用禁止の方針ですが、コバルト不要のリチウムイオン電池にシフトするだけでは、コンゴの住民が仕事を失うことになります。
世界の国々がいったいどうやって稼いでいるのかを見渡してみた時、地下資源を糧に外国に売ることでGDPが3割にも上る国となると、紛争が起きる可能性は30%以上にもなるというデーターがあるそうです。
チタンは地球の奥深くから取り出されたルチル鉱石を精製して作られたマテリアルです。
ジュエリーとなる宝石も地球の奥で、長い時間を経て作られた鉱石が採掘され、それを磨き上げたものです。
地球にはもともと酸素がありませんでしたが、シアノバクテリアという微生物が歴史上重要な役割を果たしました。
チタンと人間が出会うまでに時間がかかったためチタンのことを新しい金属という位置づけをしていますが、チタンも地球の中にずっとあったもの。地中に存在し続けてきたものです。
ではなぜチタンが見つけられなかったのか、それはチタンと酸素の結び付きだということです。
空気の中には約20%の酸素があります。その酸素のある環境でチタンをチタンとして取り出すことがむずかしい。だから地中にはこれがチタンですよという塊りがごろっと埋まっていて、それを取り出すということではないのです。
アルファーチタン、ベーターチタンという世界だそうです。
チタンジュエリーのチタニウムもレアメタルのひとつですが、イリジウムというレアメタルが地球史解剖の鍵となっています。
ある地層から見つかったイリジウムから、隕石によるものという仮説があります。
恐竜は氷河によって絶滅したという説をゆるがす新たな説に、小惑星が衝突して宇宙からの恐竜時代が終わったとするものです。これは地球上の出来事に起因するという恐竜絶滅説を根底からひっくりかえす、外的要因説です。
化学が従来の定説をくつがえし、仮説をたて立証していくのはとても建設的です。
デザインの現場もまた、新しい概念を生み出すステージにしていくべきだと思います。
参照:遷移金属とは